2010.01.01

2009年の10大ニュース

毎年、これだけは細々とやっている2009年の総括だが、気づいたら2010年になってた。あけましておめでとうございます。なんだかな。。。

1.個人的にはarduino&フィジカルコンピューティング元年

昔から存在していたMake:やニコニコ技術部を初めとする電子工作人口が2009年は大幅に増えた気がする。単にメディアが作り上げたブームではなく、ニコニコ動画やYouTubeのようなBroadcast yourselfの下地が整ったこともあるし、arduinoからtwitterに出力するような工作が簡単にできるということも要因のひとつだろう。

一方で、個人でWebサービスを作るというブームは昨年がピークで、今年はどちらかというと個人が法人化してサービス展開したケースが多かった気がする。「個人で企業に負けないサイトを作れるんだぞ」という夢が、一歩進んで「プログラムを作れれば会社も作れるんだぞ」というところまで牽引してくれているわけで、これはこれで良い流れだと思う。

2.世間的にはtwitterでしょう

去年もやっていたが、今年は、より積極的に使ってみた。ブログとの棲み分けに少し悩んだが、1〜2行だけしか書いてなかったようなブログ(ああいうのをgoogle経由で踏むと、本当に嫌な気分になりますね)が少し減るというのは、まあ、いいことなのではないかと。それにしても広瀬香美の件は騒ぎすぎですよ。

ちなみに今年はtwitter関連で、こんなエントリを書いてました。

http://goodsite.cocolog-nifty.com/uessay/2009/04/tototwitter-817.html

http://goodsite.cocolog-nifty.com/uessay/2009/04/twitteropensear.html

http://goodsite.cocolog-nifty.com/uessay/2009/06/tototwittersear.html

3.Oracle Buy Sun

MicrosoftがYahooを買収しようと動いたときは相当な騒ぎだったが、OracleがSunを買収する話は、やはりOracleやSolarisをプライベートで使う人が少ないのでインパクトが少ないのかな。

大型買収というとHP+Compaqが未だに語られているが、僕としてはどちらかが消滅しても業界構造は変わらないものと思っていた。それに対しSunの消滅は、産業が一つ分なくなったようなインパクトじゃないかと思う。食品に例えたら、とらやの羊羹が消滅したら、謝罪担当は何を持参すればよいかわからなくなるような感じのインパクトだと思う。

4.YahooがBingを。。。

これも驚いた大型提携。ところで、Googleの場合は何をやってもAdwordsに誘導して収益化してるんだな、と想像しやすいのに対し、Microsoftは検索技術をどうやってマネタイズするのかが見えない。

これが外部から見えてないだけでなく、中の人も同じ状況だとすると、いよいよ時代の覇者の交代ですね。

5.androidケータイ誕生

個人的には、もっとインパクトのある出来事になるかと思った。あのGoogleが仕掛けたのに、こんなに霞んで見えてしまうのは、最初に出た一台が「これなら次の機種を待とうかな」という出来だったことに尽きるのでは。これがオープンの弱さですよね。Chrome OSも同じ感じになりそう。

ところでiPhoneがGoogle Voiceを締め出して米政府に調査されてたのも2009年の出来事。2009年が想像力を膨らませる期間だったのに対し、2010年は堅実路線になるのでは。

6.そこらじゅうでクラウド

とある業者の営業の方が、クラウドなんてバスワードですから半年後には誰も使ってませんよ、と言っていたのが2009年の冒頭だったが、半年後にクラウドのチラシを持ってきて、バズワードと言ってませんでしたっけ?と突っ込みたくてしょうがなかった。

Amazon、Googleに続きMicrosoftも価格体系を発表したけど、意外にCore2Duoを搭載したサーバで結構なトラフィックを捌けることがわかり、むしろ自作サーバの方に注目が集まったような気も。

7.Windows7

そういえばMacBookにベータ版を入れてテストしてたっけ。XPに執着したい人は色々と粘ってるかもしれないけど、これから買う人は、普通はWindows7となるわけですね。

出来が良い、という評判ではあるけれど、一方で、Microsoftからユーザに妙な押し付けをしていないというのもあるのではないかと思う。言い換えると、ユーザにハードスペックやらインターネット認証といった高いハードルは前のOSまでにクリアさせ、ようやく反感なく受け入れられるOSになったという感じ。

8.地デジカ登場

google日本語入力だと「地デジカ」も一発で出てきて素晴らしいですね。発表されたタイミングも素晴らしかったけど、インターネットでのいじられっぷりも確信犯的でよかったのでは。

ただ、個人的には未だにブラウン管です。

9.民主党政権誕生&事業仕分け

数年前まで公共団体に営業していた身としては、数年前も予算を一律カットしていたり、それなりに支出を抑えていた現場を見ていたので、そこまで言わ なくても、という気もしたが、事業を止めることの難しさは、民間も公共も同じなので、あんな感じで外部の力で強制的に事業を辞めさせられるのは、もっと頻繁にあってもよかったと思う。

10.タッチパッドの時代

最後は帳尻合わせと言うか、2009年中に来ると思ったのプロダクトが2009年中に来なかったけれど、来たら間違いなくトップ10に入っていただろう。

CrunchPadも残念だったし、Appleの方もいつになるかわからないし。ただ、2010年には期待を持てるのではないかと。

というわけで、2010年もよろしくお願いします。

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2009.06.27

MicrosoftがYahoo!買収に失敗したので幹部を引き抜き続ける狙いは

最近、ニュースに関する話はあまりブログに書いてなかったが、やはり気になってしょうがない。MicrosoftがYahoo!の買収に失敗した後に、Yahoo!の幹部を次々と引き抜いている件である。

マイクロソフト、米ヤフー幹部をまたも引き抜き--データセンターチーム長として:ニュース - CNET Japan

マイクロソフト、ヤフーから検索部門VPを引き抜く - オール・アバウト・マイクロソフト - ZDNet Japan

元Yahoo!検索広告部門トップ Qi Lu氏、米MSのオンライン部門トップに就任 | 経営 | マイコミジャーナル

米ヤフーへ移籍したマイクロソフト元幹部が古巣へ復帰へ:ニュース - CNET Japan

もともと、会社の成功のために人材を引き抜くということはMicrosoftのお家芸みたいなところがあって、今のMicrosoftを支える数々の商品群が、引き抜かれた人材によって開発されているということは前にまとめた。

uessay: Microsoftに吸い込まれた人 はてなユーザーの評価

ただ、今回に関して言えば、自らのイノベーションのための引き抜きという感じがしない。Yahoo!本体を買収しなくても、買収と同じ効果が得られると書いている記事も見かけたが、「技術力が欲しいのではなく、Yahoo!というブランドが欲しい」と言ってなかっただろうか。

そんなわけで、Yahoo!を弱体化させるために引き抜いてるんじゃなかろうかと。だとしたら、なんか残念である。

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2009.05.27

新検索エンジンWolfram Alfaはスポーツ観戦のお供に使えるか

いろいろ話題だが、

たとえば「ヨーロッパのインターネット利用者」などといった検索クエリが求める内容を理解し、非常に適切な結果を返す
天才が作った新検索エンジン『Wolfram|Alpha』と、Googleへの影響 | WIRED VISION

Google Docのスプレッドシートに実装されているGoogleLookupという関数も似たことを実現していた。例えばGoogleLookup("Japan","Population")と入力すると日本の人口を返してくれる。

Walframも基本的に似たことをしてくれるが、GoogleLookupには出てこない過去のデータをグラフにしたり平均寿命など関連するデータを出してくれる。

http://www90.wolframalpha.com/input/?i=japan+population

さて、これをどう使いましょう、ということだが、メジャーリーガーの防御率とかは、GoogleLookupもWalframも返してくれる。Hideki MatsuiのAgeとか、どちらも返す。順位を返してくれたら、とWalframにrankと入力したら、rankという会社の株価や従業員数なんかを返してくれた。闇討ちしては一喜一憂というフェーズだ。

Jリーガーの情報は何年後に対応してくれるのか不明だが、もし対応してくれたらスポーツ中継を解説するbotなんかもできるかもしれない。

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2009.05.23

Androidは端末コスト削減にならない?

docomoで日本初のAndoroidケータイを出したHTCの社長曰く

OSは無償でも、ハードウェアやサービス、アプリの開発にはコストがかかる。初期の開発コストは想像以上に高いもの。従来のOSのライセンス料が占める割合は少ないため、大きな差はない。したがって無償のOSだからハードウェアが廉価ということではない

Android、OSは無償でも初期開発コストは想像以上に高い--HTC、HT-03A説明会を開催:モバイルチャンネル - CNET Japan
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いやいや、自主開発よりかはコスト削減できているでしょう、と思うが、そもそも国内ベンダもLinuxやSymbianをベースに作っているし、社内でスープ継ぎ足し方式でノウハウが蓄積されたものを使っているだろうから、Androidをイチから導入するのに比べても低コストなのかもしれない。

多くの機能を継承していると、すでに実装済みの機能に対する開発コストは小さいかもしれないが、かといってテストをしなくてもいいわけではないので、結局、検証コストがかかってしまう。この問題はdocomoの多くのサービスを実装している国内ベンダで顕著かもしれないが、Androidだって最初から多くの機能が盛り込まれているプラットフォームだからテスト工程で相当のコストがかかっていそうだ。

iPhoneのSDKは、そのあたりまで含めて充実していると言う噂だが、ハードは固定である。Android SDKはEclipseベースで動くとはいえ、ハード上に実装してからのテストが大変そう。

そう考えると、第二のHTCとなるようなベンダが、この先、どれぐらい現れるか疑問である。

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2008.06.05

ガラパゴスって、そんなに悪いことなのか(iPhoneのニュースに思う)

なんかWatcherの方々が国内のメーカー、特に通信機器のメーカーに対して「ガラパゴスである。だからいけない」みたいな論調で書いてる文章を見ることが多いのだが、本当にいけないことだろうか、という気持ちになったので、あえて反論してみようと思う。

日本の携帯メーカーが海外でシェアを伸ばせないことが批判の的になることが多い。では、海外の携帯メーカー、例えば世界シェア1位のノキアみたいになれ、と言いたいわけですね。

でも、docomoのNM705iなんて、さっきWikipediaを見てびっくりしたが、docomo端末のサービスの対応しなさっぷりが凄い。それ何世代前の端末ですか。

もちろん、ノキアの技術力が足りないというつもりはなく、日本で売れる価格帯に押さえるため削った機能なんだろうな、と思うが、自分がdocomoの人間であれば、せっかくネットワーク側で充実したサービスを提供してるのに、端末がついてきてないなんて悲しいだろう。そういう意味で、サービスを実験的に次々と投入して、廃止していけるなんて、むしろ諸外国から羨ましがられてるんじゃないだろうか。ノキアが世界的に売れていることと、各国のキャリアで戦える端末を開発するという技術力や競争力は別次元の話である。

もうひとつ、国内の企業にはiPhoneみたいな革新的な端末を作ることはできないよね、という批判。まあ、確かに何年かに一度のインパクトだとは思うけど、例えば富士通のヨコモーションとか、インターネットマシンとかユニークだと思うんだけどな。たまたまインパクトの面で劣ったかもしれないけど、それにだって理由はある。

誰かが指摘したように、iPhoneでメールを入力するなんて想像しただけで面倒そうである。せっかくユーザがキー入力やら予測変換に慣れてきたのに、それを捨てマルチタッチスクリーンのみに注力するメーカーなんているだろうか。それより、やはり国内の携帯メーカーは利用者、特に中高生とサラリーマンという2層に確実に合わせたモノづくりをするだろう。それは閉塞ではなく最適化なのだ。

と言いつつ、業界への刺激は利用者として大歓迎。それに、メールを打つよりブラウズしてる時間が圧倒的に多い僕にとってiPhoneは、かなり自分に合った端末じゃなかろうかという気もしている。ただ、なんかiPhoneごときで日本のメーカーが能無しっぽく語られて、その理由として「ガラパゴス」とだけ言って終わり、というのがあまりに多すぎると思うんですよ。

PR:無印良品からペンにストラップ穴を付けただけの新商品。適当なストラップを付けておくだけで紛失しなさそう。こういうイノベーション、好きだなぁ。

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2008.05.12

MicrosoftのYahoo!買収「失敗」は誰にとって失敗だったか

相変わらず、ニュースが流れて時間が経ってからなのだが、MicrosoftのYahoo!買収は実現するだろう、とブログに書いてしまったので、弁明でもしてみる。

僕は2月に、こんな感じで書いた。

そんなわけでYahoo!は、気の毒だけどGoogleの広告ビジネスを押さえ込みたいというMicrosoftの踏み台にされてしまうわけですね。

当時、社風がどうの、独禁法がどうのといったコメントは多かったが、改めて両者、すなわちMicrosoftとYahoo!が何者で、どうなろうとしているかを示してくれるようなコメントは国内のアナリストからは出てこなかったような気がする。あのMicrosoftも衰退したよね、とか語っていれば読者に適度なカタルシスを与えられると思っているのだろう。一方、ウォールストリートジャーナルでは、こんな素直な意見が読めてしまう。

[WSJ] Yahoo!にとって買収拒否は正しい判断だったのか? - ITmedia アンカーデスク
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わたしは米Yahoo!の株主の1人として、同社が有利な条件でMicrosoftに買収される可能性をふいにしたことに怒りを覚えた。この買収断念のニュースを受けて、Yahoo!の株価が5日に下落した際には、なおさら腹が立った。

この記事が面白かったのは「Yahoo!も広告でGoogleに負けたことを認めるべきだ。Panamaで苦戦していて、このまま戦い続ける理由は無い」と言い切っちゃってるところだ。僕自身も数ヶ月前までAdsense(Google)とOverture(Yahoo!)の管理画面を毎日、目にしていて、Overtureが刷新した管理画面を過剰にアピールしているのが遠吠えチックで悲壮感を感じていた。それまで高嶺の花だった最高級のアクセス解析であるUrchinをAdsenseの利用者に大盤振る舞いしたGoogleと、イチから作り直しました、というYahoo!では比較自体に無理がある。

もちろん、ユーザインタフェースが全てを決めるわけではない。ネットに広告を出してる人の考えることは大体同じで、GoogleとYahoo!の利用者層は微妙に異なり、その微妙さは、自社の利用者とどっちの検索サイトがマッチしてるか判断が難しくて、結局、両方にお金を払ってしまっている。だから、順位が逆転することは難しいかもしれないが、Yahoo!が急速にシェアを落としていくなんてことはないだろう。

でも、WSJの記事では株主として「無駄な戦いはやめちゃいなよ」と言っている。まあ、一本化してくれた方が広告を出す側にとっても有り難いが、それはYahoo!の他の資産を過小評価しすぎではないだろうか。

インターネットの歴史の中で、Yahoo!が示したものは、ポータルサイトの概念であるというのが大方の見方かもしれないが、個人的にはユーザ登録させてサービスを利用させるということを最も上手にやった会社なのではないかと考えている。たまたま、このブログで何度か紹介しているYahoo! Pipesも米国のYahoo!アカウントで使えるのだが、10年以上前に登録したアカウントで使えたのが、ちょっと感動した。そう、Windows 95が出た少し後ぐらいの頃には、Yahoo!でアカウント登録すれば、オンラインでゲームを楽しめていたのである。

Yahoo!のアカウント重視主義は、この後も変わらない。Yahoo!がFlickrを買収した時もYahoo!のアカウントで入れたし、OpenIDへの対応もした。10年前に作ったアカウントで、こんなに大量のリソースを使わせてもらって、本当にいいんですか?という感じだ。リソースの話だけをすればGmailのディスクスペースは膨大だが、GoogleがYouTubeを買収して、Gmail利用者は何か得をしている?

どんなにGoogleが便利だからといって、Yahoo!のアカウントは持ってるけど、Gmailのアドレスは持っていないという日本人は大量にいる。オンラインでWordやExcelを使えるようにしても、まだまだアーリーアダプタの実験場である。登録すればオークションもブログもできるという訴求には及ばない。だから、Microsoftに買収されないためのポイズンヒルとしてGoogleと提携するという戦略は、大量に保有しているアカウントとのシナジーを放棄しているような気がして勿体ないのではないか、と思うわけだ。

ちょっと整理しよう。

・Googleは「最も利用されている検索サイト」←最も広告で稼いでいる会社

・Yahoo!は「最もアカウントを持っているポータルサイト」

・Microsoftは「最も利用されているOSを作っている会社」

である。(Yahoo!のアカウント数の話は、ちょっと怪しいが)

で、Microsoftは「最も広告で稼いでいる会社」になりたくて、最も利用されている検索サイトを目指そうとした。で、惨敗した。敗因はわからない。ただわかるのは、端から見て勝負に見えないぐらい存在感に乏しいということだけだ。

それで、MicrosoftがYahoo!を「2番目に利用されている検索サイト」としてしか見えなかったか、「最もアカウントを持っているポータルサイト」として目を付けたかによって買収後のアクションは変わってくる。Microsoftのアカウント戦略も、.NET Passportの失敗に始まり、MSNやらWindows Liveやら迷走を続け、短絡的に広告ビジネスを狙うだけでなく(もちろんMicrosoftにも大量の株主がいるので、狙わなければいけないわけだが)、ちょっと長期的にアカウント戦略を立て直すためには、Yahoo!アカウントとの融合は悪くない気がする。

結局のところ、Yahoo!がMicrosoftに買収されないためにGoogleと提携するというポイズンヒルは、Yahoo!にとっては買収されなかった、というメリットしか残さない。それどころか、Googleにとっては提携によってYahoo!の広告ビジネスが、Yahoo!のアカウントと相互作用して大化けするまえに封じ込めた、というメリットになった気がして、ますます釈然としないわけだ。携帯の電波オークションの二の舞みたいで、世間は、もうちょっとGoogleの狡猾さに腹を立てていいと思う。

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2008.03.02

SkypeがSIPを採用しなかった幾つかの理由

New tech looks old tech
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「なぜMicrosoft Officeファイルフォーマットはこんなにもややこしいのか」は、最近、考えているオープンとプロプライエタリの関係を一歩前進させてくれた。心からグッジョブである。

あくまで個人的なレベルの話であるが、十分な記載もしてないのに「そこはRFCを読んでよ」と言い放つ、いわゆるRFC至上主義の弊害が見え始めて、何かとオープンであることが褒められる時世に、あえてプロプライエタリを選んでいるSkypeの強かさに気づかされたと言うか。

ひとつひとつ書いてみよう。

1.エンドユーザにとっては、オープンであることのメリットが享受できないこともある

HTTPで、200 OKのステータスコードを返しつつも、そのページに404 Not Foundと書いてある例は多いが、本当に「Not Found」であれば、ステータスコードも404と返すというのがRFCの考え。たまたまHTTPという技術は人間が目にすることが処理のエンドであるから、途中のステータスコードが変であっても、ブラウザを見る人が「見つからなかったんだな」と判断できれば、それでいいじゃないか、という考え方もあるかもしれないが、サーバもブラウザもHTTPに沿って作ってます、という建前なのだから、その通りに振る舞いましょう、と。

では、サーバもクライアントも自社で作っていて、どの会社の製品とも相互接続しないという場合、その建前に従わなければいけないかというと、ちょっと言い返す根拠が見当たらない。もちろん、インターネット上の通信であればIPヘッダなど正しくなければいけない。しかし、より上位であればIANAなどで各社が自由に使ってよい数字(Payload Typeとか)が割り当てられているので、それを使っている限りは、少なくとも標準化団体からは文句を言われない。

オープンであれよ、という幻想はMicrosoftが独占禁止法に抵触した際のマスコミでの紹介のされかたのミスリードという気がしてならない。それに気づいている技術者は大勢いるのだが、「マーケティング的にオープンな方が・・・」という雰囲気に負けてしまうとSkypeのようにはなれない。

2.「RFCに準拠すること」という文章は、考えなくても書けてしまう

ふたつの会社がメールクライアントを作成したとする。そして、片方では文字化けし、もう片方では文字化けしない。でも、どちらの会社とも「うちはRFCに準拠していますよ」と口にする。

このようなことは、プロトコルの作成者にとっても起こって欲しくないことなのだが、多少の妥協もしなければ世の中に出せないというジレンマもある。だから、どちらも正しいが文字化けするみたいな事象は完全にはなくならない。

さて、問題はここから。RFCも長いものでは数百ページになるものもあり、しかも一本で完結するものは少なく、大半は他のRFCを参照しているので理解するのは難しい。それでも、RFCに準拠すること、という文章は新人にも書けてしまうのだ。RFCを注意深く読んでいて、RFCで想定していることが起こるかわからないことがあるが、その一方でアプリケーション開発では、RFCのEditorが想定していない動作もありうる。「準拠」と書いても思考停止せず仕様を固めるのがプロの仕事だが、「準拠」という言葉はその性質上、達成レベルを曖昧にしてしまう。

Skypeも、SIPではないと言いつつも、基本的な考え方はSIPの流用だろう。しかし、その仕様書にはきっと「RFCに準拠」とか書かれていなくて、自分で作ったプロトコルが、どう動くべきか、第三者(そう、標準化のWGのメンバは第三者)に頼らずに決定した結果が書かれている。

3.開発者にはAPIを見せておけばいい時代となった

結局のところ、Skypeが妙な矢面に立たされていないのは、根本の技術は独自でありながらも開発者にAPIを公開する姿勢が好印象を与えたからだろう。

そう考えると、Microsoftなんて昔からAPIを公開してるのに、なんで叩かれているんだ、という話になる。

4.ベストな技術を使っていると「意図的な排他」と立証されにくい

HD DVDが敗北した関係の記事を幾つか読んでいて、こんな記述を見かけた。

長引いた原因はいくつかあるが、主に以下の点で意見がまとまらなかったからだ。 東芝の技術がもっと多く入ると思っていたが、さほど多くはなかった
(藤井氏談。標準規格は優秀な技術を採用しなければ独禁法違反となるため、無理に特定企業の技術を入れることはできない)

本田雅一のAV Trends はてなユーザーの評価  livedoorユーザーの評価  Buzzurlにブックマーク 

なるほど、そういえば独禁法は意図的に他社に不利になる仕様でないと立証しにくかったっけ。

Skypeは市場に出た瞬間から、それぞれの技術が選ばれている理由を「売り」にしていた。なぜ音質がいいのか、なぜP2Pなのか、そして、なぜSIPではないのかも語られていた。なぜ標準化技術を使わなかったを、あえて強調するなんて独特なアプローチではないだろうか。

開発当初のSkypeが、どれだけ世間を席巻するのか予想していたか知ることは難しいが、少なくともMicrosoftが踏んだ轍、そう、あれだけ開発者にAPIを公開し続けていたのに認められず、フォーマットを公開しなければいけないという運命から避けるだけの戦略を持っていたのは確かだ。

うむ、考えが少しまとまった。

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2008.02.19

DELLの携帯電話、欲しいですか?

MWC(Mobile Wireless Congress)で各社からAndroid携帯のプロトタイプが発表された。

ギャラリー:TI, NECのAndroid携帯プロトタイプ - Engadget 日本語版 (エンガジェット)
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むき出しの緑色の基盤の上で動くiPhoneモドキなUIを見ながら、ある会社のロゴを探していたが、見つかるのはNECのロゴばかり。ある会社というのは、もちろんDELL。少し前に流れた、こんな噂が気になっていたからだ。

デル、Androidベースの携帯電話を2月に発表とのうわさ--海外メディア報道:モバイルチャンネル - CNET Japan
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結局、DELLがMWCに何かを出したというニュースは見つからず、ただの噂だったのか、それとも、まだ水面下か。

ところで、DELLといえば少し前に、こんな記事を目にした。

VON Publishing - Fonality Teams with Dell

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DELLが直接というわけではないが、IP-PBX(電話交換機のIP版)に乗り出すという話。こちらは信憑性のある話で、さらに電子メールサービス会社の買収は日本でもニュースになった。

デル、企業向け電子メールサービスMessageOneを買収へ--デル兄弟の会社が1つに:ニュース - ZDNet Japan
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あくまで個人的な印象だが、電話交換機はPC直販に比べて「お客様に振り回される」商売という気がしていた。DELLという会社はBTOをはじめとするPC直販を効率化して、成り立って来た会社だから、お客様に振り回される商売を選ぶのだろうか、というのが気になる。

一方、DELLのPCは早い段階からオンサイト保守をバンドルしており、他の海外メーカーに比べてサポート力も高い。(まあ、そのサポートを請け負っている会社はDELLだけでなくHPやLenovoも請け負っているので大差はないという話もあるが)

数年前では考えられなかったが、DELLのサポート力が上がり、そして電話交換機がIP化により必要なサポートの手間が下がった。この2つの曲線が交わったからこそ、DELLが参入してきたのではないだろうか。

だとすると、社内にVoIP関連の人材も抱えているわけで、出すか出さないかは別として、Androidに興味を示すことも自然に思えてくる。

そんなふうに考えている会社、実は多いんじゃないかな。

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2008.02.11

MSのYahoo!買収提案ニュースの読み方

ついこないだ、Microsoftの買収担当幹部の退任に触れ「Windowsという自社の資産を活かせそうな人材を会社ごと買っている」みたいな話を書いたら、直後にYahoo!買収提案の話。やられた。まったくもって、時代を読めてないです。

ITProの【解説】Google,MS,Yahoo!のWeb企業買収レース,ついに最終コーナーへ:ITpro はてなユーザーの評価  livedoorユーザーの評価  Buzzurlにブックマーク という人気記事で「買収先の選択肢が、もはやYahoo!しか無くなってしまったからかもしれない」と書かれていて苦笑した。昔の「帝国」というイメージを引きずり過ぎじゃないだろうか。ただ、買収の一覧はよかった。

文化の異なる2社がうまくいくわけない、とか経済原理的には買収は不可能ではない、とか独禁法に阻まれるだろう、とか脊髄反射的な識者のコメントを眺めながらも、やはり未だに僕はMicrosoftのここ1〜2年の方向性との違和感を解消できずにいる。

その中で秀逸だったのがYahoo!買収に打って出る,Microsoftの事情を分析:ITpro はてなユーザーの評価  livedoorユーザーの評価  Buzzurlにブックマークという記事。少し引用する。(太線は私)

究極的に,この取引は広告収入の話なのだ。ここではエンドユーザーが実際にオンラインで使っている製品に焦点を当てて話をしているが,本来,この買 収劇は製品そのものではなく,収入面でもGoogleが優位に立っている検索ベースのテキスト広告がその中心にある。このビジネスは基本的にGoogle が発明し,金のなる木として改良を加えていったものである。

 MicrosoftとYahoo!が統合されると,GoogleのWebトラフィックを超え,少なくとも広告収入の観点では競争力が向上すること になる。これだけでもこの買収には価値がある。しかし,将来を見ると,Google,Microsoft,Yahoo!の3社とも,画像,アニメーション を多用し双方向にも対応できるディスプレイ広告と呼ばれる次世代のオンライン広告トレンドに焦点を当てている。

ここまで読んで、なるほど、と気づいた。Microsoftには、脈々と他人が発明して、なおかつ市場を支配しているものを奪いにいく獰猛なDNAが根付いている。Netscapeもそうだったが、それ以前にもExcelだってLotus 1-2-3に追随したプロダクトだ。Googleが発明した広告ビジネスは、Microsoftの本能が叩き潰さずにいられないのだろう。

ところで、Googleは文字通りビジネスモデルを発明してきた。もちろん、買収により生み出されたといった方が正確かもしれないが、しかしGoogle Mapを作れば、MapにAdsenseを連携させたり、Gmailも作りっぱなしではなく見事に広告媒体として育て上げている。自社に組み込んで育てるという戦略が、見ていて惚れ惚れするほど上手くいっている。

一方、Microsoftは、いくら「帝国」とはいっても、すべて買収してしまうわけではなく、自社のプラットフォームを活かす巧みな提携も見せる。最近ではWindows Live Messengerで050発信をできるようにした。提携先がNTTコミュニケーションズだったので、OCN加入者しか使えないのでは、と誤解していたが、誰でも月額200円で050番号を使える。SkepePro(月額300円)を意識したと思われる金額設定である。もちろんSkypeが本当にビジネスとして支配的になってしまったら、これぐらいの抵抗じゃ済まない思い切った参入をしてくるのだろう。

そんなわけでYahoo!は、気の毒だけどGoogleの広告ビジネスを押さえ込みたいというMicrosoftの踏み台にされてしまうわけですね。あくまで予想だけど、ブランドが欲しいのではなく広告ビジネスが欲しいのだから、仮に買収が成立したら、Yahoo!のブランド名も社風も残らないと思います。

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2008.01.28

パラダイス鎖国でDocomoがGoogleと提携した先に見えるもの

NTT DoCoMo x Google
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nobihaya
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ちょっと長いタイトルになってしまったが、DocomoがGoogleと提携してDocomoogleだね、とか誰も言わないのでスルーしていただくとして、今回の提携はKDDIからすると、さぞ呆れたことだろう。

昔から「3位までしか生き残れない」と言われていた通信業界で抜きつ抜かれつ張り合っていたDocomo、KDDI、Softbankの3社に対し、古い言い方だがポータルが2社、すなわちGoogleとYahoo!しか目立っていなかったのだから、仕方が無いと言えば仕方が無い。

仕方が無い、と書いているのは、3社のうち1社ぐらいは国産のポータルを選ぶぐらいでないと、国内のエンジニアのためには、よくなかったんじゃないだろうか、という考えがあるからなのだが、一方で、世論は「Docomoは国内の通信会社にしか仕事をさせなかったから、国内の携帯電話メーカーは世界で戦えない」と刷り込まれている。だから、よほど優れた国産ポータルでもない限り、あえて選ぶことはできなかったんだろうな、と。

こないだ、無料で使えるVoIPを幾つか調べていたら30社以上も並べたリストが出てきた。国内では電話機を作っている会社がラインナップとしてVoIP機器を持っていることはあるが、サービスとしてこれだけあるのには驚く。しかも30社リストには有名どころはひとつもない。最大手のSkypeですら儲かっているとは言えない状況なのに、これだけの会社が参入しているのはマーケティング的に見たらクレージーだと感じる。しかし、ここには「国内のメーカーにだけ仕事をさせる」というのとは別の考え方とは別の世界が広がっている。鶏(投資家)が先か卵(ベンチャー)が先か、という話もあるが、「俺は天才だから、俺が作ったら儲かる」みたいな奴が、ごろごろいるのだろう。

ポータル(あえて検索エンジンとは書かないよ!)に話を戻すと、Googleの最初のサービスとしての検索エンジンを作った創業者コンビは天才だったかもしれない。しかし、Googleがサービスを始めた当時なんて検索サイト選びに苦労するぐらいに雨後の筍で、Yahoo!がゲームをエサにアカウント数を増やしている横で、Googleなんて検索窓だけで奇妙にストイックな存在感があっただった。

では、今はポータルとしての資質が備わっているかと言うと、まだギーク寄りな存在だろう。それどころか、Googleが何十とあった検索サイトの中から生き残ったのは、老若男女が便利に使ってもらおうなんて媚びる気持ちを持ち合わせていなかったからだろうと思うこともある。逆に言うと、何十とある検索サイトが、より広い層へアピールするためパートナー選びをしている間に、純粋に検索エンジンの成長すべき姿に向き合った結果として今のGoogleがあると言える。だから、検索そのものに困っていたKDDIがどう思ったかは知らないが、少なくともDocomoが手を組むには補間しあうポイントが合ってない気がする。本当は技術だけじゃなくリクルートみたいに老若男女をカバーする能力に長けたところと組むのが、Docomoにとって良かったんじゃないかとも思うんだよ。

それはそうと国内のポータルは、携帯というオイシい市場をごっそりGoogleに奪われたわけだ。それでもウェブ界隈の方々は残された需要にしがみつこうとするのか、それとも別の新しい流れを見つけ、そこに流れ込むのか。なんだか迎えてはいけない分岐点に差し掛かった瞬間を見てしまったような気分になった。

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