相変わらず、ニュースが流れて時間が経ってからなのだが、MicrosoftのYahoo!買収は実現するだろう、とブログに書いてしまったので、弁明でもしてみる。
僕は2月に、こんな感じで書いた。
そんなわけでYahoo!は、気の毒だけどGoogleの広告ビジネスを押さえ込みたいというMicrosoftの踏み台にされてしまうわけですね。
当時、社風がどうの、独禁法がどうのといったコメントは多かったが、改めて両者、すなわちMicrosoftとYahoo!が何者で、どうなろうとしているかを示してくれるようなコメントは国内のアナリストからは出てこなかったような気がする。あのMicrosoftも衰退したよね、とか語っていれば読者に適度なカタルシスを与えられると思っているのだろう。一方、ウォールストリートジャーナルでは、こんな素直な意見が読めてしまう。
[WSJ] Yahoo!にとって買収拒否は正しい判断だったのか? - ITmedia アンカーデスク

わたしは米Yahoo!の株主の1人として、同社が有利な条件でMicrosoftに買収される可能性をふいにしたことに怒りを覚えた。この買収断念のニュースを受けて、Yahoo!の株価が5日に下落した際には、なおさら腹が立った。
この記事が面白かったのは「Yahoo!も広告でGoogleに負けたことを認めるべきだ。Panamaで苦戦していて、このまま戦い続ける理由は無い」と言い切っちゃってるところだ。僕自身も数ヶ月前までAdsense(Google)とOverture(Yahoo!)の管理画面を毎日、目にしていて、Overtureが刷新した管理画面を過剰にアピールしているのが遠吠えチックで悲壮感を感じていた。それまで高嶺の花だった最高級のアクセス解析であるUrchinをAdsenseの利用者に大盤振る舞いしたGoogleと、イチから作り直しました、というYahoo!では比較自体に無理がある。
もちろん、ユーザインタフェースが全てを決めるわけではない。ネットに広告を出してる人の考えることは大体同じで、GoogleとYahoo!の利用者層は微妙に異なり、その微妙さは、自社の利用者とどっちの検索サイトがマッチしてるか判断が難しくて、結局、両方にお金を払ってしまっている。だから、順位が逆転することは難しいかもしれないが、Yahoo!が急速にシェアを落としていくなんてことはないだろう。
でも、WSJの記事では株主として「無駄な戦いはやめちゃいなよ」と言っている。まあ、一本化してくれた方が広告を出す側にとっても有り難いが、それはYahoo!の他の資産を過小評価しすぎではないだろうか。
インターネットの歴史の中で、Yahoo!が示したものは、ポータルサイトの概念であるというのが大方の見方かもしれないが、個人的にはユーザ登録させてサービスを利用させるということを最も上手にやった会社なのではないかと考えている。たまたま、このブログで何度か紹介しているYahoo! Pipesも米国のYahoo!アカウントで使えるのだが、10年以上前に登録したアカウントで使えたのが、ちょっと感動した。そう、Windows 95が出た少し後ぐらいの頃には、Yahoo!でアカウント登録すれば、オンラインでゲームを楽しめていたのである。
Yahoo!のアカウント重視主義は、この後も変わらない。Yahoo!がFlickrを買収した時もYahoo!のアカウントで入れたし、OpenIDへの対応もした。10年前に作ったアカウントで、こんなに大量のリソースを使わせてもらって、本当にいいんですか?という感じだ。リソースの話だけをすればGmailのディスクスペースは膨大だが、GoogleがYouTubeを買収して、Gmail利用者は何か得をしている?
どんなにGoogleが便利だからといって、Yahoo!のアカウントは持ってるけど、Gmailのアドレスは持っていないという日本人は大量にいる。オンラインでWordやExcelを使えるようにしても、まだまだアーリーアダプタの実験場である。登録すればオークションもブログもできるという訴求には及ばない。だから、Microsoftに買収されないためのポイズンヒルとしてGoogleと提携するという戦略は、大量に保有しているアカウントとのシナジーを放棄しているような気がして勿体ないのではないか、と思うわけだ。
ちょっと整理しよう。
・Googleは「最も利用されている検索サイト」←最も広告で稼いでいる会社
・Yahoo!は「最もアカウントを持っているポータルサイト」
・Microsoftは「最も利用されているOSを作っている会社」
である。(Yahoo!のアカウント数の話は、ちょっと怪しいが)
で、Microsoftは「最も広告で稼いでいる会社」になりたくて、最も利用されている検索サイトを目指そうとした。で、惨敗した。敗因はわからない。ただわかるのは、端から見て勝負に見えないぐらい存在感に乏しいということだけだ。
それで、MicrosoftがYahoo!を「2番目に利用されている検索サイト」としてしか見えなかったか、「最もアカウントを持っているポータルサイト」として目を付けたかによって買収後のアクションは変わってくる。Microsoftのアカウント戦略も、.NET Passportの失敗に始まり、MSNやらWindows Liveやら迷走を続け、短絡的に広告ビジネスを狙うだけでなく(もちろんMicrosoftにも大量の株主がいるので、狙わなければいけないわけだが)、ちょっと長期的にアカウント戦略を立て直すためには、Yahoo!アカウントとの融合は悪くない気がする。
結局のところ、Yahoo!がMicrosoftに買収されないためにGoogleと提携するというポイズンヒルは、Yahoo!にとっては買収されなかった、というメリットしか残さない。それどころか、Googleにとっては提携によってYahoo!の広告ビジネスが、Yahoo!のアカウントと相互作用して大化けするまえに封じ込めた、というメリットになった気がして、ますます釈然としないわけだ。携帯の電波オークションの二の舞みたいで、世間は、もうちょっとGoogleの狡猾さに腹を立てていいと思う。